────カチッ。
ドアロックが解除される。
俺の愛車、
シルバーのエスティマ。
実家を離れる時に、
唯一親父が『持って行け』と言ってくれたもの。
いつも思うけど、
エスティマは俺には少々広すぎるし大きすぎる。
なんせ運転も車にもさほど興味がないから、使うのはこうやって通学する時だけ。
「……ねっむ……」
車のキーを回し、
また一つ欠伸をしながら俯いた。
「…事故んのだけはマジ勘弁な」
「…事故るワケないやろ。
俺の運転は安全でテキトーや。」
「…どこが安全なんだか。」
そう助手席でシートベルトを締めながら文句を言う吾郎。
バックミラーを合わしながら、俺は時計を見つめた。
…8時、ちょうど。
「………壱は?」
「…多分もうすぐ来るよ。
俺が出て行く時にはあいつ起きてたから。」
「…ふーん…」
俺はもう一度バックミラーを見つめた。



