数年間働き、音大行きの決意を親父に話した後。
『持って行け。』
親父が一言そう言って渡したのは、車のキーと通帳だった。
──……え……?
目を疑い、止まっている俺に……
『母さんがお前に残してくれたものだ。』
そう言って通帳を手渡した。
──そこには、
おふくろが俺の為に遺してくれていた遺産。
──“そばにいれない代わりに、何か困った事があったら使うように”
との遺言だったという。
おふくろの最後に残された深い愛情を感じずにはいられなかった。
『これは俺からだ。』
と親父から差し出されたのはエスティマの鍵。
『持って行け。』
『────……』
もう一度そう言った親父は、確かに笑っていた。



