───次の日。
「おつかれーっす。」
この日も大学帰りにバンドの練習をして、そのままバイトに行った帰りのこと。
俺は街角にある小さいけれど隠れ家的なバーでバイトをしていた。
他にもガソリンスタンドや居酒屋にも週に何回か行っていて、ある程度の生活費を稼いでいる。
「……ふー……」
あっという間に今日も深夜だ。
深い深い闇に包まれた空を見上げた。
──…俺は高校を卒業してすぐに大学には行かなかった。
……いや、
正確には行けなかった、
という方が正しい。
──理由は簡単。
親父が一切金を渡さなかったからだ。
母親が逝ってしまってから、俺と親父はほとんど話す事はなかった。
俺が小さいなりに親父を笑わせようとしても、それはムダな努力で。
俺が年を重ねるごとにますます親父は笑わなくなった。
生きていく程に二人の溝は広がり、今ではまるで他人扱い。
そんな親父が快く音大行きを承諾してくれる筈もなく──…。
……それでも。
俺は、どうしても音大に行きたくて行きたくて。
夢を捨てられずに、高校を卒業してすぐ働いた。
一人暮らしをする余裕が出来るまで。



