───…何時間……
経ったんだろうか……?
頭を抱えながら、壁にもたれかかる俺はひどく疲労困憊していた。
何も考える事が出来ないくらい頭は真っ白なのに、
視界はこれでもかと言うほど真っ黒で、
あのまま…
もし俺が帰らなかったらチカは一体どうなっていたんだろう……。
チカはどうしてあんな事を───……?
考えれば考える程答えが出ない疑問によけい頭が痛くなった瞬間。
───…カツン……
カツン───……
廊下に響く足音が徐々に近付いて来て、
「──…川瀬チカさんの付き添いの方ですか?」
「……え……」
そう声を掛けられて顔を上げれば、
「川瀬さんの処置を担当した者です。」
そう言って、一人の医者がこちらを見つめて立っていた。
「───…チカは!?
チカは……っ
チカは大丈夫なんですかっ……!?」
────…ガタンッ!
「落ち着いて下さい!!
大丈夫です!!」
すがるような思いで叫ぶ俺に、医者はそれ以上に叫んで俺を止めた。
「──…少し縫いましたが、命に別状はありません。
念の為一日入院して頂いて様子を見ることにします。」
「……………」
「───…あぁ…
それと。」
医者は何か思い出したように振り向き、
「───あなた、もしかして“純”と言う名前の方ですか?」
「───……え……
何で俺の名前を……?」
「川瀬さんが何度も何度もあなたの名前を呼んでいました。
よほど大切に思っているんでしょうね、あなたの事を。」
「…………」
「自傷行為をする人には、支えてあげる人が必要なんです。
川瀬さんがあなたを支えとして必要としているのなら……
出来るだけ突き放したりせずに、支えになってあげて下さい。
そしてあなたにとって川瀬さんは必要なんだと根気よく理解させて下さい。
そうすれば、きっとお二人で乗り越えられるはずですから……。」
「…………」
────ポン、と肩を叩き
『良いアドバイスをした』
とばかりに歩いていく医師に
俺は返す言葉が見つからないまま、ただ茫然と立ち尽くしていた。



