「……で?純どうした?」
「………」
「今日久しぶりに、嬉しそうな顔して帰って行ったよねっ♪」
「………」
───…吾郎と壱に会って、ホッとしたのも束の間。
またもや答えられない質問の嵐に、俺はドッと疲れが溜まっていくのを感じた。
……墓穴掘ったかも。
今まで居心地が良かった居場所が、こんなに窮屈に感じるなんて──…。
「……ごめん、ちょっと寄っただけやからさ♪
帰りに何となくノリで寄りたかっただけやねん。
こんな夜中に寄ってごめんやで。
………帰るわ♪」
「───えっ!?純……っ」
ニコッと笑って再び玄関に戻る俺を、二人がビックリして追いかけてくる。
逃げるように靴を履く俺に、
━━━━━ガシッ!!
「─────………」
力強く掴まれた手。
振り返ると、いつになく真顔な吾郎が俺を見つめていた。
「─────待てよ。」
「………………」
「何か話したかったんじゃないのか?
だからここに来たんじゃないのか?」
「…………」
「なぁ……
お前らしくないよ。
最近のお前は何か見てておかしいんだよ。」
「…………」
「ちゃんと食ってんのか……?
また無理してチカちゃんと───…」
────“チカ”。
「──────…ッ…」
それだけで、俺は全身に冷や汗が流れた。
だって脳裏には
ナイフを持って、人が変わったように不気味に笑いながら近付いてくるチカが──…。
「────~~っ…!!!!」
━━━━━パンッ!!
俺は、掴まれたその手を払いのけた。
その手は
俺を傷付ける手なんかじゃなく、
救いを差し伸べてくれている手なのに
その見定めが出来ないくらい、俺には限界が近付いていた。



