─────…………
───パタン。
食事を終え、俺はエスティマのドアを閉める。
……時刻は、七時。
どうしようかな…?
出来たら、彩とゆっくり話したいんやけどな…。
……つか、時間とか門限は大丈夫なんかな?
「──…彩、まだ時間いける?」
「──…大丈夫…」
「ちょっと彩と行きたいとこあるんやけど、えぇかな…?」
「…行きたいとこ…?」
俺は返事をする代わりに微笑み、そのまま車のキーを回した。
途端にエンジンがかかり、
♪…♪♪…♪♪…♪
車内に音楽が掛かる。
かかっているのは
“B'zのcalling”……。
「……………」
───いつだったか。
あれは、確か一年前の若葉の季節。
彩を好きになってまだ間もない頃だった。
彩に好きな奴がいるだなんて、まだこれっぽっちも疑っていなくて。
何も知らないで、純粋に笑えていたあの頃。
あの頃も、同じように同じ曲が流れていた。
──…そして、
確かに夢見ていた。
“いつか彩に歌えたらいいな…”
………と。
………なぁ……
あの頃の自分に伝えるすべがあるなら伝えたいよ。
恋なんて楽じゃない。
お前が思っている程簡単なものでもない。
描いた夢が実現するなんて、都合のいい甘い夢に過ぎない。
………気付けば良かった。
この歌の歌詞は、未来を暗示しているんだと。
でも、
………気付けなかった。
「────…♪」
あまりにも今の俺にピッタリ過ぎるから、バカみたいに声を張り上げて歌った。
あの頃の自分を、歌い消すかのように。



