───そして、月日は流れた。
俺は閉じていた目を開き、目の前に広がる視界を見つめた。
───…静かに舞う桜。
降り注ぐ優しい光。
確かに感じる新しい季節。
………春が、来ていた。
あれから、俺は現状から動けない日々を送っていた。
仲間に嘘を装い、作り笑顔で送る毎日。
唯一の音楽でさえも──…
池内教授に言われた助言を考え過ぎて、依然スランプに陥ったまま。
チカも相変わらず、俺の監視役かのようにあのまま。
彩とは───……
あの日から、連絡は滞ったままだった。
彩の誕生日当日、以前登録していたディスプレイに虚しくお知らせされただけ。
贈る言葉も、
掛ける言葉も、
弁解する言葉も、
何一つ……思い浮かばなくて。
バースデーメールを作成しようとしても、画面の空白を埋められなかった。
未送信メールの日付は
“02/21”のまま。
「…………はぁ……」
──…俺はそれを見つめながら、ここら辺りでは誰も知らないであろう、ある山頂にたった一人で訪れていた。



