研究室の中には様々な楽器やCD、楽譜が散らばっており──…
その中に、埋もれるように池内教授がデスクに座っていた。
──…池内教授は、作曲に関しての講義を担当している、少し年配の教授で。
音楽に対しての思いがハンパなく、それ故に講義やテストに関しても手厳しい方だった。
むろん、俺のゼミを担当しているのもこの池内教授で。
厳しいながらも、俺は池内教授の音楽に対する考えを純粋に尊敬していた。
壱はしょっちゅう呼び出しされて説教はザラだったが……
俺は今までこんな風に呼び出された事がなかった。
──……静かな空間が、
よけいに緊張を煽っていく。
「──…朝岡くん。」
「……はい。」
───…妙な緊張が走り、俺はゴクリと固唾を飲み込んだ。
「………これは何かね?」
そう言って池内教授が差し出したのは──…
「……は……」
受け取って、ピタリと俺の動きが止まる。
「……もう一度聞こう。
───これは何かね?」
「……………」
───…それは、
俺が先日課題で提出した楽譜だった。
確か一つの曲を作曲して提出する、という課題だったはず。
しかし俺が作曲した楽譜には大きくバツが跳ねられ、全否定されている。
「──何か、悩みでもあるのかね?」
そう的を射抜かれ、俺は顔を上げた。
「……これは音楽ではない。
これは、ただの心の雑念を雑音に変えただけだ。」
「…………」
「君らしくもないじゃないか。
以前君が作曲したものは、全て生きていた。
だが、今君が作った曲は中味がまるでない。
曲が、死んでいる。」
あまりにも見抜かれた答えに、俺は言葉を失った。



