彩は次に俺を見つめた。
──────…ッ
捕らえられたかのような真っ直ぐな視線に、俺は固まる。
見つめられただけで全身が火傷した気分だ。
「彩、授業お疲れぃ♪」
「朝岡さん…!」
感情を隠し、明るく振る舞う俺を見て、彩はまんまと騙されて笑ってくれた。
………良かった。
誤魔化す事が上手くて。
俺はそれ以上彩を直視することなんか出来なくて、
話かけることすらままならくて、
───…だけどそれは、
今までのように決して照れているわけではなく。
俺は彩を避けるように視線を床へと移した。
「えへへ、純と一緒に来ちゃった♪」
チカは笑ってそう言うと、まるで話を振るかのように俺を見つめた。
──訴えるようなチカの視線に、すぐさまチカの要求を察知する俺。
…………あぁ………。
『今までと同じように付き合っている感を出して』
というチカからの暗黙の指令か。
プライドが高いチカの事だ。
きっと、
“今まで通りの私達”
をここでは崩したくないのだろう。
……そんなチカの考えはすぐに読めた。
「何かな~…
あれから行きたい行きたいうるさくてさ…」
「何ぃ~?
誰がうるさいって?」
俺とチカが装う“自然”にみんながくすくすと笑う。
この工作で、
誰がこの二人が別れているだなんて疑うだろうか?
誰も知る訳がない。
誰も疑う訳がない。
真実を知っているのは自分達だけ。
「でっでっ?
キョーコちゃんはどうしたいのっ?」
チカは再びキョーコに話を振りかけた。
「………?」
彩がキョトンとしている横に、
「キョーコ、マサシの事が好きなんだって」
今まで口を開かなかったぶんが、笑顔で今までの会話を彩に教えていた。



