彩はそこまで言うと、
言葉に詰まって俯いてしまった。
「………」
……俺はボロボロの心を引きずりながら、恐々と手を伸ばした。
まるで、壊れ物に触れるかのように。
許されない光に手を伸ばすかのように。
……ふわっ……
────……
彩の髪に触れた瞬間、
ふいに涙が零れ落ちそうになった。
──そこで思い出した。
俺は何があってもこの子を守ると決めたんだ。
どんな時も背中を押すと、
笑顔を守ると──…
「──…彩は、ぶんの何なん?」
「……え…
彼女…だよ…」
「──じゃあ堂々と胸張っといたらいいねん。
何も彩が逃げる事とちゃうやろ?
──今は彩が彼女やねんから。
睨んできたのかって、僻みとかちゃうんかな。
彩も彩で睨み返したら良かったのに。」
自信を持って。
強い思いがあれば大丈夫だから。
君は尚更、果敢な風にも立ち向かうんだから。
そんなつまらない思念に惑わされないで。
────前を見て。
「……朝岡さん…
ありがとう。」
俺は彩の頭越しに、
人混みの中、必死になって周りを見渡しているぶんを見つけた。
「……あ、あれぶんちゃうか?
彩の事探してるんとちゃう?」
彩は振り向き、戸惑いながらもぶんを見つめた。
二人の姿に、引き離せない何かを感じたのは確かだ。
「────行っといで?」
もう、迷うなよ。
俺は笑顔で彩の背中を押した。



