彩がぶんから何を聞いたのかは分からないが──…。
キョロキョロと周りを見渡している彩の姿、
勝ち誇ったように笑いかけるぶんのその笑顔で
──それだけで、
何となくぶんが何を囁いたのか分かってしまった。
「……純、飲み物買ってきた。」
──その時、
いつからか姿を消していたマリアが現れ、スッと俺に飲み物を差し出した。
「おー♪
マリア、サンキュー。」
飲み物を受け取ると、
マリアは怪訝そうな顔つきをして彩とぶんをジッと見つめた。
その瞬間、彩は衝撃を受けたようにマリアを見つめ返し───……
「この人が朝岡さんの彼女?」
────…
そう尋ねてきて、俺はやっぱりぶんが何を囁いたのか悟ってしまった。
余計な事を──…
横目でぶんにそう話し掛けるが、ぶんは涼しい顔をしていて。
────…何だか、
無性にイラついてくる。
「………………違う。
…あたし、マリアだから。
…チカはあっち。」
マリアは彩と目線も合わせず、チカがいる方向を真っ直ぐ指差した。
人違いをした事と、マリアのあまりのクールさ加減に、彩は一歩引いてしまった様子だ。
別にマリアは怒っている訳ではないのだが─…
やっぱり、初対面のヤツにはビビらせてしまうマリア特有のオーラだと俺は思う。
……けど、周りの状況を直ぐに察知するマリアは、感づいたように俺を見つめた。
「………」
“まさか?”と語りかけてくるマリアの視線。
俺も気付かれないように素早く頷き返してマリアに合図を送る。
すると───…。
「なになにっ?
あたしの事呼んだぁ?」
近くの店を見終えただろうチカが、ニコッと笑顔で現れた。



