「純?どうした?」
「…や、何でもな──…」
吾郎にそう答えようとして、俺はまた凍りついてしまった。
ぶんが、
俺を睨んでいる。
途端に、ぶんと俺の間に火花が散った。
まるで、
“近寄って来るな”と言うような威嚇的なぶんの瞳。
──…俺がこのまま逃げると思うなよ。
そんな挑発的な視線を投げかけ、俺は平常心を保った。
「あっ!彩!」
偶然を装って、彩の後ろ姿に聞こえるようにそう呼びかけると──…
俺の声に反映し、
彩は驚いた様子で振り向いた。
振り向いた瞬間に靡く髪が綺麗で、
小さなその姿が愛らしくて、
俺は胸に走る痛みを抱えながら
「彩~♪」
と明るく手を振って笑顔で近付く。
ぶんと俺の間に散る火花は、もう稲妻にでも変わりそうな勢いだ。
「ゴローちゃん、俺焼きそば食いたい!!」
「ダメだってば。
壱、お前さっきから食べ過ぎなんだよ!!」
───壱と吾郎の言い合いが聞こえ、俺はたしなめるように二人を見つめた。
「あの人達、朝岡さんのお友達?」
……彩は相変わらずだ。
見ていない分、また少し綺麗になった。
髪も、香りも、化粧も
微妙な小さな彩の変化に胸がバタつき、俺は照れながら笑った。
「んー、まぁそう。
俺の連れ。
文化祭って言ったら来たがったから……」
「そっかぁ♪」
彩はニコッと笑い、言い合いしている壱と吾郎を微笑ましく見つめていた。
………その時。
「朝岡さん、
今日はチカちゃん来てないんですか?」
ぶんはニコリと笑いかける。
………こいつ……
今のはワザとだ。
ワザとチカの話をして、
俺には彼女がいるという事実を盾に、彩に対して境界線を張る気なんだろう、きっと。
「あー…
連れとその辺におると思うで。」
「…………?」
彩は何が何だか分からずキョトンとしている。
当たり前だ、話してないんだから。
彩がチカの存在を知るはずがない。
ぶんは、ソッと彩に耳打ちをして笑う。
それが何故か、悪魔のささやきに見えて仕方がなかった。



