チカにごまかしのキスをして、俺達はやっとナナちゃん…──
いや、お化け屋敷から解放された。
「チカ、ごめんな。
嫌じゃなかったか?」
「──えっ…!
うっ、ううん大丈夫よ。」
チカは俺と目が合うとパッと視線を反対にして、廊下を見つめてしまった。
………
本当に嫌じゃなかったんだろうか─…
───…と、そこへ…。
──♪…♪……♪♪♪
「………ん?」
耳に聞こえてくる、クリアな音楽と歌声。
俺も窓から外を見つめると、中庭で何やらバンド演奏しているのが見えた。
「ライブか。
おっすげぇ、ガールズバンドやん♪」
俺とチカは演奏をより近くで聞こうと中庭へと近づいて行く。
近付けば近づいていくほど、今演奏しているガールズバンドが、一生懸命に弾いて歌っているのが見えてきた。
「あ……」
「どうした?」
「あたしこの曲好き……」
────…♪…♪…♪
演奏されている曲は、今大ヒットしているバンドによるもの。
ZONEの“secret base ~君がくれたもの~”だった。
「あぁ!この曲いいよな。俺も好き。」
「純がこの曲歌ったら、また違う感じになるかな?」
「へ?うーんどうやろ?」
チカは遠い目をしてステージを見つめた。
まるでその瞳から過去をリンクさせている眼差しで─……。
「──…純も高校の時文化祭でライブしたよね、何歌ったか覚えてる?」
「え?あー………
何やったっけな……」
頭からライブの記憶を引っ張り出しながら、整理していると。
「──“winter again”。GLAYの。」
チカが何の迷いもなくスパッと口にし、俺はやっと当時を思い出した。
「そうやったそうやった!GLAYのやつや♪」
俺が高校の時に大流行したGLAYの“winter again”。
それをライブで歌った時は本当に盛り上がった。
楽しくて楽しくてしょうがなかった、いい思い出。
「あの時、純が好きな女の子達がいっぱいライブに殺到したんだよ?」
「いやちゃうやろ、曲が名曲やったからその影響やって♪」
「──…純は知らないだけよ……」
チカは……
そう告げて、どこか寂しげに笑った。



