唇を、重ねようとして。
言いようのない罪悪感に襲われた。
──“したくない”。
訪れた突然の拒否反応。
チカの唇があと数ミリという超至近距離で、俺は何かに魂を抜かれたように固まってしまった。
だって、
だって彩が思い浮かぶ。
付き合ってないじゃないか。
彼女でも、自分のものにした訳でもない。
彩本人は俺が好きだなんて思ってもいないだろう。
なのに何故…
何故こんなにも罪悪感が津波のように打ち寄せるのだろう。
別に、今まで気持ちがなくたってチカの事抱いてたじゃないか。
こんな──……
こんなキス如きで──…
「………──っ」
───出来なかった。
どうしても唇には出来なくて、迷った末にチカの額に口付けした。
「おっとおでこですか!!
まぁいいやOKとしましょう♪」
「……だって恥ずかしいやん、こんな公衆の面前で~」
恥ずかしいっていう便利な日本語があって良かった。
俺は明るく笑い飛ばして何とかその場をやり過ごした。
……自分でも、
何故彩に罪悪感を抱かなければいけないのか全く意味が分からなかった。



