いがみ合っていたのに、
嫌い合っていたのに、
人の涙を見ると放っておけないのは何故なんだろう。
俺は……
昔からどんなに嫌いでも、
泣いてるヤツを放ってはおけなかった。
チカの話を聞くうちに、
嫌いだという感情は消え失せた。
チカもそれは同じで。
いつの間にかチカは俺に好意を示すようになった。
──「付き合って」──
待っていなかった、
その言葉。
好きと言うにはまだ微妙な時期だった。
何も言えない俺に、
『とりあえず形だけでも付き合って。
付き合ってみなきゃ分からない。
絶対あたしのこと、好きにさせて見せるから。』
──…そう、言われた。
人を傷つける事が嫌いな俺は、そのまま流されるように頷いてしまった。
バカだと笑ってくれ。
いずれにしても、
傷つけることに変わりなんかなかったのに──…。



