──…ザァァァッ…。
風に揺れる桜の木。
広大な教室に入り、
窓から桜の情景に心を奪われていた時だった。
「───純くんっ♪」
甘ったるい声に呼ばれ、振り向く。
「……ん……?」
そこには、
俺の苦手なキツい香水の香りをプンプン振りまいて笑う女の姿。
誰やっけ。
えぇと……。
「この間のゼミの飲み会で帰り駅まで送ってくれてありがとー!!」
……飲み会……。
──あぁ、思い出した。
確かゼミの親睦会でベロベロに酔ってた子ーやっけ。
「…えぇで、あれから大丈夫やった?
一人で電車乗れたん?」
「うんっ、それでね?
送ってもらったお礼に、
ご飯でも一緒にどうかなぁって……」
………………。
吾郎と壱とマリアの痛いくらいの視線が俺に突き刺さる。
「──ごめん、
またみんなで一緒に飲みに行けへん?」
「──…………。
あっそ………。
やっぱり皐月さんが彼女ってウワサ本当なんだ…」
俺が何とか苦い笑顔を見せると、その女の子はそう呟き、ついでにマリアを睨み付け立ち去ってしまった。



