「……あたしね、ぶんちゃんが好きなんだ。」
しばらく車を走らせていると、彩はポツリポツリと話し始めた。
「……うん。」
「でもぶんちゃんには彼女がいて──…
ダメだって分かってるのに、どうしても止められなくて……
苦しくて苦しくてさ…
それで朝岡さんに正論言われてあんな事言っちゃって……
ごめんなさい……」
彩はションボリしたように床を見つめて、悲しく笑った。
「……大丈夫か?」
──彩は首を横に振り、グスッと鼻を啜って。
「……だ…
だいじょうぶ……」
そんなかすれてしまった涙声で笑った。
「……彩──…」
「無理だって分かってるんだぁ…。
でも、今はどんな形でも傍にいられるだけでいいの。
それだけで幸せなの─…」
力強く腕で涙を拭い、目の奥に光を灯しながら彩は微笑んだ。
「……ん、頑張れ」
──…彩。
その逞しい横顔に、俺が勇気をもらった。
おそらく彩と俺は同じ立場だ。
避けられない逆境。
一方通行な恋愛。
それに立ち向かって行こうとする君が、俺は好きだ。
「─…俺も頑張らななぁ…」
「え?」
「……いや、こっちの話。」
「???」
首を傾げる彩に、俺は柔らかい表情を見せた。
……まさか、君に励まされるなんて思いもしなかったから。
“諦めないこと”。
教えてくれたのは、彩だった。



