俺も車に乗り込み、キーを回してエンジンをかけ──……
「えぇっと…
とりあえず移動してえぇか?」
「ん…。」
「飯、もう食った?
腹減ってる?」
「ううん、空いてない…。」
「そっか。」
「………」
────…っ……
そう返事を返す彩を見て、俺の顔はたちまち険しくなった。
だって──…
彩が………
彩の目が、赤かった。
目の下はぷっくり腫れて。
ゆっくりとまばたきをする長い睫毛に、ハッキリと涙の雫が付いている。
──完全に、俺のせいだ。
大切な笑顔を一つ、自分の手で壊してしまった。
───…ズキッ……
ズキン──……ッ
鋭く切り裂かれた痛みが全身を襲う。
消してしまった笑顔の代償が、これほどまでに堪えるものなのか。
──『ぶんはやめとき』
『彩が傷つくの目に見えてるやろ』──
……自分が良かれと思って言った正義の言葉。
──…でも、
それは相手の心を切り刻むような言葉に変化した。
──…彩はぶんが好きだ。
好きな奴には笑っていて欲しい。
たとえこれが君に不利な恋愛だとしても、君自身の意志を否定したりはしないから。
……応援するよ。
時には、君の背中を押そう。
時には、君を全力で守ろう。
そんな、目には見えない風になる。
それが、
俺に許された立ち位置なのだから。



