「早くライブしたいなー♪」
「そんな事言う前にギターの練習せぇよ」
「へったくそなギターだからみんなの足引っ張るのよ。」
「…なんだとマリアー!!」
「何よ、やる気?」
「まーた始まった…。」
吾郎が火花を散らす二人をなだめる。
──紅を結成して数年。
メジャーデビューとかそんな気はさらさらない。
大学でのライブやストリートライブ、イベントライブなどに出演するのが俺達の小さな楽しみで。
そのために、
日々練習したり音合わせしたりと充実した毎日を送っていた。
更に俺は作詞作曲するのが好きで。
紅のオリジナル曲は全て俺が作成し、最終的に吾郎とアレンジする。
一つの曲が出来上がり、
四人でそれを奏でること。
それはもう何者にも変えられないくらい、俺の生きがいで。
音楽に携わることが何より一番の幸せだった。
だから、
それ以上に幸せな事なんてないだろうなと思っていた。
──そう。
一人の女の子に出逢う、
あの日までは。



