「!あぁ!音大!
うんうんっ、そー言われれば何か音大っぽい!」
「“っぽい”って何や“ぽい”って。
俺はちゃんとした現役音大生ですー。」
少しスネるように言う俺に、彩はくすくすっと花のように笑った。
「…確かに、声とか綺麗だもんね。
彩、ずっと思ってたんだぁ。
声、素敵だなって♪」
────……え……
突然言われた言葉に息を呑んでしまった。
彩は何の疑いもなく、微笑みを浮かべてこちらを見つめている。
声については、俺が自分で一番気になるものだった。
自分の声は好きでもあるパーツであって、嫌いなパーツでもある。
ヴォーカルをしていると、いつだって何だって声を評価にされる。
それは嬉しい事でもあるし、落ち込む事だってある。
時には歓声が響いたり、
時にはヤジの嵐が鳴り止まない事だってある。
でもそれは仕方ない。
いくら吾朗がずば抜けてベースが上手くたって、
いくら壱が必死にギターを弾いたって、
いくらマリアがドラムのリズム感に優れていたって。
俺の声でほとんど全て紅の評価が変わってしまう。
──俺の楽器は声だから。
それで勝負してるんだから。
……そう思って、今日まで音楽しながら生きてきた。
だから……
だから、まさか好きな子から“声”を褒められるなんて思いもしなかった。
……そんなこと……
生まれて初めてだった。
「……ありがとう。」
そう言って。
俺の顔がどんどん熱を帯びていくのを感じた。



