それでもさっきの切ない表情が忘れられない。
「でもなーんか元気なさそうやな?」
「……んー。
そーでもないよっ?」
そう聞くと彩は視線を合わせず、無理に明るく笑った。
……ほら、すぐに分かる。
また嘘を付いて、やけに明るく振る舞っているんだから。
「……ま、よう分からんけど寂しそうやから俺が相手したろ♪」
「えっ!?」
彩は驚いて振り向く。
俺はじっと彩を見つめた。
君の表情やリアクションですぐに分かるんだ。
人知れず、悩んでいること。
見えない傷を負っていることも──…。
「…ねぇ朝岡さん、今日は大学休みなの?」
彩は話題を変えてニコッと微笑んだ。
「うん、そう♪
じゃないとけぇへんよ。」
「あれ…何の大学だっけ?
彩聞いた事ないよね…?」
「………そーいや言ってないなぁ。
何でしょう?」
ニヤッとからかうように笑う俺に、彩は黙って言葉を失っていた。
こう聞いたのは、何となく俺について考えて欲しかったから。
その間は俺の事を考えてくれているという変な優越感が支配する。
──…しばらくして、彩はぺらぺらと喋りかけてきた。
「……理数系?」
「違う♪」
「えーっ!じゃあ工学!」
「それも違う♪」
「…経済?」
「違う♪」
「…う…。
分かんない………。」
くすくすっという笑いをどうしても隠せず。
──可愛い。
暗示をかけるかのようにそう見つめて、俺は口を開いた。
「俺が行ってるのは音大やよ。
こう見えて音楽がめちゃくちゃ好きやねん。」



