君との恋は面倒すぎる

 人が困惑しているのを気にすることも無く、薫くんはいつもの少しおちゃらけているような様子は全くなく、真剣な表情をしていた。

 普段話すときは柔らかく笑って、周りを和ますのにそんな彼が緊張してこちらを見ている。

 それから形の良い唇をはっきりと動かして、予想外の言葉を発した。


─────俺、日和ちゃんが好きだ。


 突然の言葉に何も反応できない。

 今、何て言った?
 急にこのタイミングで?

 にわかに信じがたい言葉にいまだ飲み込めないまま、私は立ち尽くし動けなかった。

 そんな素振り今までもなかったし、むしろ蒼空くんと私のことを応援してくれているように見えたのに、どうして突然好きだなんて言い出すのかわからなかった。


「だから蒼空に喧嘩売った。俺も日和ちゃんが好きだから遠慮しないって」

「ま、待って。そんな感じ全然なかったし、てっきり紗月が好きなんだって思ってた」

「紗月は大事な幼馴染みだよ。でもそれ以上に俺は日和ちゃんが好き」


 まさか自分が誰かの恋愛対象に入ってるなんて思わなくて驚いた。

 何で、いつから?

 聞きたい事はたくさんあるけどどれも言葉に出てこない。


「ごめん、困る…」


 気持ちは嬉しいなんてそんな慰めなんて言えなかった。ひどく動揺して、この時の私には人の気持ちまで考える余裕がない。

 答えを返すどころか自分で呼び出した薫くんをその場に置き去りにして逃げ出した。勇気を出してくれた彼を傷付けるような行動だったと思う。

 わかっていたけれど、受け入れられない気持ちに対して、どう返すべきなのかその場では正解が分からなかった。