君との恋は面倒すぎる

「可愛いに決まってる。俺のためにこんなに可愛くしてきてくれたのに」


 行動も言葉も全て苦しい。

 可愛いってずっと言ってほしかった。まさか抱きしめてもらえた上に欲しい言葉までもらえるなんて思ってもいなかった。

 私も背中にゆっくりと腕を回して抱きしめ返す。


「今日、優しすぎてどうしたら良いかわかんない」

「何そのいつもは冷たいみたいな言い方」

「冷たくないけど、こんなに優しくもしてくれないのに」


 そう言うと苦しいくらい抱きしめられて背中を軽く叩く。

 それでもあまり力は緩めてくれない。


「七瀬と違って俺はそんな素直に何も言えない。何で逆にそんな言いたい事言えんの」

「え、何で…。何でだろう」


 口数も言葉も少ないから蒼空くんの事何もわからないけど、普段そう思ってるんだ。

 なんだかさっきから可愛いことを言っている蒼空くんに思わず笑ってしまう。


「何笑ってんのムカつく」


 怒っている蒼空くんには申し訳ないけど可愛くて仕方がなくて、笑いもこぼれる。


「こうやって不器用なりに気持ちを伝えてくれる蒼空くんが可愛くて好きだなって」


 蒼空くんが少し身体を離して至近距離で見つめ合うと、頬に触れられる。

 もしかして…、今度こそキス…?なんて期待をして目を見ている。

 目をギュッと瞑ると、そのタイミングで花火が上がる。

 その音に引っ張られるように私も蒼空くんも空を見上げた。


「…タイミング」

「ふっ…」


 何だか不機嫌な蒼空くんのつぶやきにもおかしくなってきて笑うと、蒼空くんもこっちを見て少ししてから笑ってくれた。

 そんな笑顔を見たことがないから、もっと知りたいし見たい。いろいろな表情をする蒼空くんを。

 今年は二人で笑い合って、綺麗な花火を隣で見れた。

 これ以上幸せなことなんてこの先にあるのか。

 恋愛経験の浅い私には想像もつかない。