君との恋は面倒すぎる

「何で先に薫が見てんの。君の浴衣姿」


 そう小さな言葉で呟いていた。
 聞き逃してしまいそうなほどの小さな声。


「え?」

「薫にとか1番先に見せたくないんだけど」


 そう不器用につぶやく蒼空くんに、それって、もしかして…と少し期待した。

 そんなわけないって言われるかもしれないけれど、どうしても確かめたかった。


「嫉妬?」


 私の言葉に少し驚いた後、顔を赤くしてムスッとした表情でこちらを見てくる。


「そういうのいちいち言葉にしなくていいし。何なの、本当」


 そう言いながら顔を逸らしてしまう。

 初めて一緒に出かけて知らない蒼空くんがたくさん顔を出してくる。嫉妬とかも、それで不機嫌になるのも全部嬉しい。

 わかりにくくて不安になって、怒った理由を知った後も愛おしいと思えてしまう。


「ねぇ、浴衣姿どう思う?」

「は?何急に」


 私の質問に少しだけ不思議そうな顔をしていた。
 確かに急な質問を投げた自覚はある。

 薫くんに可愛いと言われた時は、自信になったし嬉しかった。

 でも誰のために可愛くなる努力をしたかって、蒼空くんの為でしかない。蒼空くんに可愛いと言われなければ、浴衣を着てきた意味がない。


「薫くんは似合ってるって言ってくれた。でも、薫くんに言われても意味ない。本当にそう思ってほしいのは蒼空くんにだから」


 そうまっすぐに目を見て伝えると蒼空くんも逸らさずに見ていた。

 それから少し困った表情をして笑う。


「いろいろツッコみたいけど、本当もう…」


 蒼空くんが私の頬に手の甲で触れてくる。

 初めてこんな風に触れられて驚いた。


「…1回しか言わないし、今度はそんな手に乗らないから」


 そう言って私の身体をそっと抱き寄せる。

 急に抱きしめられて胸がどきどきしてうるさい。