君との恋は面倒すぎる

────花火大会当日。


「え!?浴衣処分した!?」

「捨てたわよ、もう随分着たし、小さくなってきたでしょ」

「…言ってよ、今日蒼空くんと花火大会着ていきたかったのに」


 母の当たり前だと言いたげの口調で言われた事実に肩を落とした。てっきり着ていた浴衣はまだあると思っていた。

 そんな私の様子に母がハッとした表情をして、申し訳無さそうな表情に変わる。


「彼氏と初めての花火大会だもんね。当日だし、今から買いに行っても可愛いのはないかもしれないわね…」

「いいんじゃねぇの?柊も興味ねぇよ、お前の浴衣姿なんて」


 茶化してくる兄の顔にクッションを命中させ、急いでスマートフォンを取り出す。

 藁にも縋るような気持ちで紗月持ってたりしないかな…と、電話をかけてみる。

 以前1度、紗月の母が着付けをしてくれるという話で、浴衣を借りたことがある。

 その時のことを考え、もしかしたら紗月の家ならあるかもしれないと思った。

 数コール後、コール音は止み『もしもし?どうしたの?』と紗月の声が聞こえてくる。


「紗月、着ない浴衣あったりしない?私の処分されてたみたいで…」

『ええ、急だね』


 苦笑いする紗月に申し訳ない気持ちでいっぱいだったけれど、紗月しか頼れる人はいなかった。

 それから数秒後に紗月の声が聞こえてくる。


『あったと思う、いまからおいで!』

「紗月~!ありがとう!神!」


 そう話をした後、急いで紗月の家に向かう。

 初めてのデートだし、せっかくのお祭りだしせっかくなら可愛いと思われたい!