君との恋は面倒すぎる

 蒼空くんが居るかもしれないなんて期待をして廊下を出て姿を探してみたけれど、もう帰ってしまったのか姿がない。

 相変わらず帰るの早い。
 一緒に帰る選択肢が蒼空くんには無いのか、少し寂しくなる。

 蒼空くんと帰りたいと思うのは、きっと私の我儘だからそうしたいのであれば事前に約束を取り付けるべきだったのだと思う。

 いつか一緒に帰る事が自然になればと願うけれど、その道のりはきっとまだ遠い。

 校門側の窓の方に寄って、駄目元で蒼空くんの姿を探しているとちょうど校内から出た蒼空くんがいた。


(気付かないかな、こっち)


 気付け~と念を送ってこちらを見る事を期待するも、振り向く様子は無い。

 仕方ないと、諦め眺めながら手を振ると、ふと蒼空くんが振り返りこちらを見上げる。

 まさか振り向くと思っていなかったから驚いた。いつもの無表情で私を捉えこちらを見つめている。それからスマートフォンを取り出すと、耳に当て、そのタイミングで私のスマートフォンが揺れた。

 画面には蒼空くんの名前が表示されており、慌てて通話ボタンをスライドさせ耳に当てる。


「そ、蒼空くん!?」

『そんなところで何してるの』

「…蒼空くんと帰りたくて誘おうと思って探してたけど、もう外出てたんだね」


 私の言葉に何も返ってこなくて気まずくなる。

 少し期待していた。私の姿を見付けて電話をしてくれたと言う事は、一緒に帰ろうって誘ってくれるのではないかと。私の単なる理想でしかなかったようだけれど。


「…また今度早めに誘うね。また明日」


 そう言って笑顔で手を振ると無表情でこちらをまだ見ている蒼空くん。
 それから静かな声で『来れば?待ってるし』と誘いを受けた。

 そんなぶっきらぼうな言い方なのに、いつもの声の中にもどこか優しさを感じる程で、驚いたけれどそれよりも嬉しさが出てきて、何度も首を縦に振る。


「…うん!今急いで降りる!」

『急がなくていいから。転んでほしくない』


 蒼空くんのその声を聞くなり急いで電話を切って、教室から自分の鞄を取り急いで生徒玄関に向かった。