君との恋は面倒すぎる

 引っ張られるがまま3階の空き教室まで来ると、手首から手が離れる。

 その後しばらく無言で、とにかく自分のせいで騒ぎになってしまったことが申し訳なく思い謝罪した。


「ごめん、蒼空くん。目立つ事しちゃって…」

「七瀬が謝る必要ないでしょ」


 蒼空くんの静かな声が教室に響いて、教室自体が静かだからその声がよく響いた。

 向かい合って涙を我慢していると、蒼空くんが私の手に持っていたお弁当袋を掴む。

 それを見て驚いていると蒼空くんがまっすぐにこちらを見る。


「…貰っていい?」


 問いかけてくる蒼空くんに頷く。

 緊張とかさっきの恥ずかしさとか、守ってくれた嬉しさでもう感情がぼろぼろだった。そっとお弁当の包みを開いていくのを見て、緊張感も走る。

 そんなに不格好にはなってないはずだけど…。

 蒼空くんがゆっくりと袋から取り出して、包みを開いてお弁当の箱を開けた時だった。

 中身が振られて悲惨な事になっている。


「わあああああああ!ごめん!こんなん食べられないよね!」


 慌てて恥ずかしさからお弁当の箱を蓋で閉じる。

 さっき感情ボロボロで気をつけるの忘れてた。本当に泣きたい。こんなはずじゃなかったのに、こんなんじゃ喜んでもらえない。

 そう考え込んでいたら「ふっ」と笑い声が聞こえる。

 蒼空くんの方を見ると、右手の甲で口元を隠して可笑しそうに笑っていた。


「七瀬らしい」


 そう言って小さく笑顔を見せる蒼空くんは本当にレアな表情で。普段クールで笑うことなんてほとんど無いのに私の前で笑ってくれた。

 これで2度目だけど、そんな事が嬉しくて浮かれてしまいそうになる。