君との恋は面倒すぎる

それから少しして、電話の奥からえええええ!とでかい声が聞こえる。

思わぬ叫び声に頭が痛くなる。

この時間帯になんて声出してんだ、この人は。


『お兄ちゃん!うるさい!早く風呂入れってお母さん言ってる!』


電話の奥から七瀬の声が聞こえた。

あまり聞かない怒る七瀬の声に思わず口元が緩む。

家族の前だとそんな感じなんだな。


『お前本当にこんなんでいいわけ?もっといい女選べただろ。』


先輩のその発言で、電話の奥から『まさか…』と声が聞こえてバタバタと騒がしい音が聞こえる。


『返せ!このクソが!』

『蒼空くんに変な事言って困らせてるんでしょう!早くお風呂行け!』


中学でもよく喧嘩してるのは見ていたけど、こんな風に素が全開の七瀬をまだ知らない。


『あ、蒼空くん?ごめんね、絡まれたでしょ』


電話の奥から七瀬の少し取り繕ったような声が聞こえてくる。


「別に」


そうぶっきらぼうに返事をしてまた後悔をする。

何で俺はもっと優しく返事できないのか。