君との恋は面倒すぎる

 翌日、昼休みになってそわそわしていた。

 今日から、だよね?お弁当一緒に食べるの。

 昼休みはずっと誘ってくれていた紗月に話すと「良かったね!」と、笑顔で言ってくれた。本当に、いい親友だと思う。

 二人分のお弁当を持って立ち上がると、近くまで来た蒼空くんが持ってくれる。


「あ、え?そんなに重くないし大丈夫だよ?」

「良いから、手持ち無沙汰なら君はこっちでも握ってて」


 そう言って私の手を取って廊下に出る。

 なんで最近そんなに甘いのか…!

 周りの視線も、若干集めていて恥ずかしい。

 なんとなく、あの二人って別れたんじゃないの?という声も、聞こえるような気がする。


「蒼空くん!何で学校で!しかもこんな目立つように手なんか繋いで…!」

「牽制」


 そう短く答えて笑う蒼空くんに、ハッとなる。

 最近茉莉ちゃんが話しかけに行ってもすぐに席を立ったり、冷たく接してくれてるけど、そういうこと?

 男女ともに私らに近づくんじゃねーよってコト!?

 意外と子供みたいなことをする蒼空くんにニヤニヤとしてしまいそうになる。


「なんかいつも貰ってばっかで…、何か欲しかったりするものないの君」


 欲しいもの…、欲しいものかあ。

 物欲は基本的にそんなに無いから、突然聞かれても困る。

 考えているうちに、一つだけ思い浮かんだ。

 あ、ひとつだけあった。

 私が欲張りで我儘になれること。


「じゃあ、思い切りぎゅって抱きしめて欲しい」


 そう言うと「そんなこと?」とでも言いたげに笑って、席を立ち上がった蒼空くんが、私の腕を引いてそのまま閉じ込めてくれた。

 このお願いを今では当たり前のように聞いてくれる。

 前はなかなか出来ないことだったのに。


「お礼にならないけどこれ。というかお礼じゃないとしないみたいな言い方しないでくれる?」


 そう言って呆れるような声を出す蒼空くんに少し笑ってしまう。

 本当に、これ以上に欲しいものなんてない。

 欲しいのは私だけがずっと使えるこの居場所だけ。