君との恋は面倒すぎる

「日和!」


 後ろから名前を呼んで追いかけてくる蒼空くん。

 呼ばれたから一応振り返る。


「どうかした?」


 そう問いかけると何か後ろめたさそうな、焦ったような表情に、そっちの方が傷つきそうになる。


「…蒼空くん、行ってあげたら?私の事で傷付いてるって、全部話聞いたんでしょ?」

「何でそんな諦めたような顔して…」

「茉莉ちゃんの言ったこと事実だし。言い訳とかそういうのが無いだけだよ。もう蒼空くんしか頼れる人いないんでしょ、茉莉ちゃん。そういうの放っとけないもんね、優しいから」


 なんて好きだったはずの彼の性格を、今じゃ皮肉のように零していた。

 間違いなく振られるな、これ私。
 自分でもよく嫌な女になりきれてると思う。

 渡す渡さないとか、そういう話以前に、蒼空くんが茉莉ちゃんの話を信じるならそれで終わり。とっくに諦めている。


「…紗月とお昼約束したんだ、もう行くね」


 そう言って少し笑って手を振り、また背を向ける。

 その後、蒼空くんは追いかけてこなかった。