君との恋は面倒すぎる


 彼氏に髪乾かして貰えるなんてどんな贅沢!?

 人に髪乾かして貰えるのは気持ちがいいし、甘やかされているという気分になる。

 小さい時はよく親がやってくれていたが、歳をとるにつれ、こんなふうに誰かに甘えられることは無くなっていた。

 だから新鮮で、相手が蒼空組んだというのがまた嬉しかった。


「せっかく綺麗な髪してるのに傷んだらもったいない」


 綺麗な髪と褒められて顔が熱くなる。
 私、今は絶対に見せられない顔してる。

 乾かしてくれた後、ドライヤーの電源を止めて乾いてサラサラになった髪に蒼空くんが触れる。


「ありがとう」

「…本当、予想外の事するし、手かかる」


 呆れたように言ってるのにその声は随分優しくて、蒼空くんの方を見ると優しい目付きでこちらを見てくれていた。

 手がかかるなんて言いながら嫌だなんて思ってなさそうな、そんな様子。

 しばらく見つめ合うと、蒼空くんは変わらず髪を優しく撫でる。


「明日、一緒に回る。でいいんだよね?」


 明日は水族館で自由行動の予定。

 蒼空くんは気を使って紗月や茉莉ちゃんと回ってと話してくれていたけど、私が蒼空くんと回りたいって言った。

 友人との思い出は大事だし、作りたい。だけど、それと同じくらい蒼空くんとの時間も、大切で、失くしたくない。


「うん」

「そう」


 返事はすごく短いけど、声はいつもより柔らかく、私の選択に少しは喜んでくれているように感じた。

 蒼空くんは未だにすごく分かりにくいし、思考も感情も全部を理解なんて、当然出来ていないけれど、前よりもほんの少しは読み取れるようになってきた気がする。


「楽しみ?」


 そう問いかけると、数秒こちらを見たあと、蒼空くんはふと笑ってくれた。

 その笑顔だけで肯定してくれてるって、今はわかる。


「日和がはしゃぎ回って怪我しないように見とかないと」

「保護者目線やめてよ!」


こんな風にからかってくるのも、その時楽しそうに笑うあなたも、全てが愛おしい。