君との恋は面倒すぎる

「あ、ありがとう」

「ねぇ、何してんの」


 蒼空くんはどこか、迷惑そうな、呆れたような、怒っているような、どう考えてもネガティブな響の声色だった。


「ご、ごめんね…」


 そう慌てて謝ると、少し困った表情をして、優しく頭を撫でる。


「…そんな事しなくても時間まで共有フロアで話せたのに。バカ」


 そう言って私を立たせ、蒼空くんもベッドから立ち上がった。

 突然の行動に何がしたいのか、理解が追いつかず、されるがまま。


「部屋の鍵、ある?」

「うん、私持ってるけど…、何で?」

「じゃあいいや、島崎。時間まで部屋借りるから」


 そう言って、茉莉ちゃんの返事を待たずに、みんなの元から手を引いて部屋を出て、廊下を歩き出す。

 私は何が起きたか分からないまま、困惑していた。


「えっ、どこに?」

「君の部屋、リスク犯すなら俺の方がいいでしょ。日和は、こういうの見つかりそうだし。」


 少し振り返り、そう説明すると、フロアが違う私の部屋まで、非常階段を上がり、向かう。

 その言葉でわかった。先程のは、呆れていたわけでも、起こっていたわけでも、迷惑だったわけでもなく、蒼空くんなりに心配してくれた現れなのだと。





*





 部屋に入ると、私が使うベッドに2人で腰掛ける。


「…嫌だった?会いに来たの」

「嫌とかじゃなくて、俺と会うのに君がそこまでのリスク犯す必要無いでしょ。あの感じだと提案したのは、鈴村だと思うけど」


 言い方はぶっきらぼうだけれど、私を思った発言だった。

 会いたい、って気持ちだけで、そんなの考えたこともなかったのに、蒼空くんは常に私のことを考えた行動を取ってくれる。

 だけど、ほんの少しだけ「それに」と話し始める声色が低くなった。


「風呂上がりで平気で他の男の前に出てくるとか、何考えてんの本当」


 そう言いながら頬を片手でぎゅっと挟む。

 その表情は、不機嫌。


「ご、ごめ⋯っ!」

「髪、ちょっと濡れてるし。本当バカ…」


 そう言って立ち上がると、部屋に置いてあるドライヤーを手に取り、コンセントに挿した。

 そのまま電源を入れ、私の髪に温風を、熱すぎない、程よい距離感で当てる。