君との恋は面倒すぎる

 先程の場所から、少し離れた所まで来た。

 それから2人きりになると、私の方に向く。

 彼の表情がどこか険しくて、この格好が失敗だったのかと悟った。


「あ…、やっぱ似合ってなかった?」


 そう言って苦笑いしても蒼空くんは笑ってくれない。

 笑えないほど、酷かったのだろうか。


「…反応に困る」


 蒼空くんに少しでも可愛いと思われたくて着てきたけど、反応に困るまで言われたら、泣きたくなってきた。

 私の表情を見るなり、眉を下げ少し困った表情をしている。


「何で泣きそうな顔してるの…。いい加減わかって、俺の事」


 そう言って少し気まずそうに涙目になってる私の目元を親指で優しく拭う。

 触れられたら、余計に溜まっていた涙が零れて止まらなくなる。


「可愛すぎるから…」


 波の音に攫われそうな程小さな声だったけど、確かに耳に入ってきた。

 予想外の言葉に「……え?」と間抜けな声が出た。


「露出してなかったらとかじゃない。君の水着姿が、俺には無理。どんな顔して見ていいか分かんないし、でも見てるのは俺だけがいいのに他の奴も見てるし…、って、俺何言って…」


 そう言って、徐々に頬に赤みが増して、手の甲で口元を覆っていた。


「えっ、と。つまりどういう意味で?」


 そう問いかけると、蒼空くんは増々顔を真っ赤に染めてしまう。

 それから覚悟を決めたような表情をして、私の頬に両手を添えた。


「…可愛いって言ってんの。自覚しなよ、自分がどんだけ可愛いか。無自覚で俺の事振り回さないで」


 振り回してるのは、蒼空くんの方だよ。

 いつも態度とかは素っ気ないのに、いつも後から言葉で甘く伝えてくるから。

 不安にされるのにいつも、こんな風に本音が甘酸っぱくて、最後には欲しい言葉をくれる。

 可愛いってずっと言って欲しかった。


「…こっち来て」


 そのまま手を引かれ、岩裏の影に連れていかれ、周りには見えないように隠される。

 前には蒼空くんが居て、背には岩裏。

 逃げられないように間に挟まれて閉じ込められる。

 こんな風に見つめ合うことも初めてではないのに、ひどく照れくさい。