君との恋は面倒すぎる

 放課後、茉莉ちゃんがいつも通り「日和ちゃん、帰ろう」と誘ってきてくれる。

 だけれど、今日は蒼空くんに誘われていて、どうしてもそっちを優先させたかった。


「あー…、ごめん。茉莉ちゃん。私今日は蒼空くんと帰りたい!また明日一緒に帰らない?」


 そう言うとなんだか少し傷付いた表情をしていて、ちくっと胸が痛んだ。

 そんな表情をされると悪いことしているわけでは無いのに、罪悪感が湧いた。

 どう返答しようか悩んでいると、茉莉ちゃんは「何で…」と小さく声を零した。


「ん?」

「…何で、日和ちゃんは男の子…、柊くんと付き合えたの?怖くないの?」


 そんな質問に考えた事も無くて返事に困る。中学の時から好きだったし、私に男性恐怖症の気持ちの理解は、今は難しいし、まだまだ足りていないと思う。

 それでも何で蒼空くんだったかを答えるなら、いくらでも気持ちは伝えられる。


「蒼空くんは、すごく優しい人で格好良いんだよ!なんでも器用にこなすように見えて不器用な所とかもあってね」


 そう話し始めると「いいから」と後ろから口を塞がれる。

 その声と匂いで、蒼空くんだとわかった。


「…ごめん、島崎。今日は日和の事は、俺が連れてってもいい?」


 蒼空くんも普段茉莉ちゃんが私しか頼る所が無いのを分かっていて、今まで気を使ってくれていたのだと思う。

 私も茉莉ちゃんといるのは楽しいけど、蒼空くんと帰りたかったのも少しはあった。

 上手く友情と恋愛が両立できていなくて、今までどれほど紗月が蒼空くんとのことを優先させてきてくれたか、身に染みた。

 本当は、友情を保つためには、そんな風に上手く、蒼空くんとの時間ばかり取れないのが当たり前なのかもしれない、と気づきを得た。


「……はい」


 蒼空くんの問いに茉莉ちゃんは目線を逸らして返事する。

 茉莉ちゃんの返事に嬉しくなって、手を握る。


「ありがとう!茉莉ちゃん!また明日ね!」


 そう言って手を上下に振ると、茉莉ちゃんがようやく少し笑ってくれた。


「また、明日ね」


 彼女と手を振って分かれると、蒼空くんの隣を歩き、一緒に校舎を出ていく。