君との恋は面倒すぎる

 紗月と分かれて教室に行き、黒板に書かれた座席表を見る。

 七瀬…は、と自分の名前をまたもや探していると「あれ、よかったじゃん。蒼空の隣」と後ろから声が聞こえてきた。その声に引っ張られるように振り向くと、薫くんが「おはよ」と後ろで笑みを浮かべ立っていた。


「え、私の席ある?」

「ないことなくね…?七瀬と柊、並んでるよ」


 そう言われてもう一度黒板を見ると、真ん中の席の一番後ろに確かに私達の名前が書かれていた。


「う、わ。紗月とクラス離れたこと以外は嬉しい…」

「はいはい、早く行きなよ。バカップルさん」


 そう毒吐き笑いながらも、薫くんも席の方に歩いていく。

 隣の席、同じクラス。名前順になるといつも席は近かったりするけど隣の席は初めてだった。

 先に席に着いていた蒼空くんの元へ近寄って「おはよ」と声を掛けながら茶色の革製のスクールバッグを机の上にぼんっと置く。


「おはよ」


 蒼空くんから返事が返ってくるだけで口元が緩む。今日からこんな風に自然に毎日挨拶できるなんて…、前みたいに駆け寄らなくていいという事実が、嬉しい。

 当たり前ってなんて幸せなんだ、とこの時は盛大に浮かれていた。


「隣の席、嬉しい」

「…いつも昼休みとか隣じゃん」

「もう!それとこれは別でしょ!」


 そんな会話をすると蒼空くんは優しく笑ってくれる。

 いつか席替えはしちゃうけれど、席替えしてもテストの度とかに隣になれる。

 小さなことかもしれないけれど、私には幸せな事だった。