☆キャンディガール★

「なれるといいですね、キャンディガールに」

「え?」

「え、とは? おかしな事を言ってしまいました?」

「い、いえ、そういう訳じゃ……」

 キャンディガールになりたいんだって打ち明けると大抵は夢見がちと茶化されるから。大人の男性に肯定して貰えるなんて珍しいし、どう反応すればいいか困りリボンをいじる。

「僕はキャンディガールになりたいという想いは誇っていいと思います。キャンディガールは貴女くらいの年頃にしか務まらない大事なお役目です」

 膝を曲げ、目線を合わせてくる。わたしはその吸い込まれそうな瞳に息を飲む。青い眼差しは透き通っているようで底が見えない。

「目に映る事柄だけが真実とは限りません。むしろ人の目に触れない場所でこそ奇跡が生まれるのではないでしょうか?」

「奇跡?」

「えぇ、綿貫さんは奇跡を信じます?」

 ネームプレートを見てわたしの名前を口にする。どうしてだろう? この人から目が離せない。話していると頭の中がふわふわしてきた。

「さぁ、手を出してみて」

 言われるがまま両手を差し出せば、そこへキラキラ輝く球体が乗せられる。

「キャンディ?」

 それも明らかに高そうな。

「えぇ、とても美味しいですよ。先輩と一緒に召し上がってみて下さい。あ、他の生徒には内緒で」

 人差し指を立て、ウィンク。キザな仕草がとても様になり、ボーッと見とれちゃう。

 とーー職員室のドアが開いた。