放課後ーーわたしはユリ先輩との待ち合わせの前に職員室へ寄った。

(学園生活で困った事があれば相談してね、って言ってくれたし)

 担任の三木差(みきさ)先生はズバズバ物を言う所があるので、キャンディガールについてストレートな答えを貰えるかもしれない。
 言葉がオブラートに包まれない分、ショックを受ける可能性もあるけれど、このままジッとしていたって何も始まらないから。

「お嬢さん、リボンが曲がってますよ」

 踏み込もうとした時、柔らかい指摘を受ける。

「赤色のリボン、1年生ですね」

 その人はわたしの曲がった胸元を示し、クスリと笑う。

「え、あっ、やだ、わたしってば恥ずかしい! またユリ先輩に怒られちゃう!」

 いつのまにかヨレていたリボンを慌てて結び直す。

「まだ着慣れないのですから仕方ないでしょうに。厳しい先輩ですね」

「いえ、ありがたいくらいです! 身なりを整えていないとキャンディガールになれませんので!」

「……キャンディガール。貴女はキャンディガールになりたいのですか?」

 ここで我に返り、顔を上げた。目の前の男の人が誰かなんて気にせず、会話をしてしまった。

「あ、えっと、その」

 少なくてもこの人は先生じゃない。こんなイケメン教師がいたら噂になるもの。
 ますます頬が熱くなり、クスッて笑われる。