憂は本来は喜怒哀楽は顔に出やすい方だが、幾ら気持ちが冴えなかろうと公共の場でそれを曝け出さない程度の常識は持ち合わせている。
だからバイト中はずっと笑顔を貼り付けていた。
目の前に店員がいるのにわざわざ憂の所まできて声をかけてくるのも、会計の際にどさくさに紛れて手に触れられるのもいつも通りだ。
ただ少し…いやかなり気になる視線を除いては、だが。
少し前から自分に向けられる視線がある。
自分よりは少し年上だろうが、細身で気の弱そうな男が先程からチラチラと自分を覗き見ているのが気になって仕方がない。
ストーカーの類なら無視を決め込むのだが、ただ何となくそんな気がしないのは向けられる視線が舐め回すようなものではなく、どちらかというと心配そうにこちらを伺う感じに思えたから。



