「ーーそれじゃあ、この件は柊さんに伝えておいてね」
こちらまで聞こえるような声量で沙里奈はそう言って話を締め括った。
頭を下げる市塚を背にヒールの音を鳴らしながら颯爽とこちらへ歩いてくる。
そのまま通り過ぎるかと思いきや、沙里奈はレジに立つ憂の目の前で急に立ち止まった。
「そうだ、貴女」
そう言ってゆったりと視線が向けられ、一見穏やかとも伺える無表情を見せてきた。
「この間の対応といい、あまり接客態度が良いとは言えないわね。あとその青い顔も、お客様の前に立つにはいかがなものかしら」
「…っ、申し訳ありません」
返す言葉も無く頭を下げれば、沙里奈はスッと耳元に顔を寄せてきた。
「私と柊のお店の評判、落とすような真似しないでくれる?」
目の前の視界が静かに失われていく。
彼女は自分から顔を離し、にこりと微笑んだ。
そのまま背を向けて去っていく姿を、憂はただ見つめる事しか出来なかった。



