灰を被らないシンデレラ




「なー、俺ら付き合い長いじゃん?そろそろ……な?」


スス、と欲に塗れた手つきで腰をさすられゾワゾワと悪寒が走る。


憂はキッと眉を吊り上げ男を睨み、添えられた手の甲の皮膚を思い切りつねり上げた。


「いって!」
「簡単にヤれると思わないでくれる?そんなに私とシたきゃ札束積んで出直してきな」


ベッと舌を出して中指を立てながら怒りに任せて煽ってやった。

その後もダンスホールに入れば言い寄ってくる男は跡をたたず、それらを軒並み蹴散らして中心に立つ。

溜まりに溜まったフラストレーションを発散させるかの如く身体を動かせば、少しは鬱憤が晴れていく気がした。


ーーいつまでこんな虚しい日が続くんだろう。


来週には、憂は20歳の誕生日を迎える。
そうすれば、これまでは制限されて出来なかったことが可能になりもしかしたらこの地獄から抜け出すことができるかもしれない。

これまでのような贅沢な暮らしは出来ないだろうが、それでもあの父親に支配されながら生きるくらいなら泥に塗れた暮らしの方がまだマシだ。

黎には悪いが、これも臣永に生まれてしまった宿命として諦めて欲しい。
どうせそう遠くない内に、自分より優秀な教師達が付けられるのだから。


そうして夜は更け、その日は朝日が昇る前に自宅へ戻り、布団に入った。