そしてその翌日の朝、柊の口から聞きたくない女の名前が出た。
「憂、お前沙里奈と会ったのか」
呼び捨てにする仲なんだと咄嗟に思った言葉を飲み込み、憂は笑顔を浮かべた。
「うん、会ったよ」
「何を言われた?」
おそらく昨日彼女が店に来たことが市塚から柊へ連絡がいったのだろう。
柊と付き合いの長い市塚も知っている存在、その事実がますます憂の心を締め付けた。
「…柊さんの恋人だったって。なんか、私の事気に入らないみたい」
はははと笑い飛ばすように言ったが、柊の顔は真剣なままだった。
「他には?」
「どうしたの?柊さん、なんだか怖いよ」
「いいから」
これ以上あの女の話をしたくないのに。
そうは思うが、口に出せなかった。



