「すみません、勤務中なので関係ない話はご遠慮願います」
「ふふ、逃げるんだ」
この女が自分を挑発しているのは分かる。
けれどどれほど挑発を受けようと憂は折れるつもりは無かった。
「そういった話は私ではなく一宮社長に直接されてみては?」
店内では誰が聞いているかわからないので、出来るだけ自分達の関係が悟られないように言った。
「もちろん連絡はしたわよ」
沙里奈の言葉にズンと胸が重くなるのを感じた。
「けどねえ、返事が返ってこないの。何処かの誰かさんが監視でもしてるのかしら?」
「私は存じ上げません」
「ふうん……まあ良いわ。今日はこの辺にする」
彼のお店に迷惑かけられないもの、と女は鈴を転がしたような声で言い、憂の並べていた商品の隣のものを手に取る。
「また来るわ」
地獄のような言葉を残し、沙里奈はレジへと歩いて行った。



