呆然としたまま立ち尽くし、スマホの振動に気付いたのは何度目の着信だったか。
我に返って電話を取り、自分の所在を確認する柊に少し教室が長引いたと嘘をつき帰路についた。
帰宅までにこの混乱する頭をなんとかしなければと思ったが、思ったよりショックだったようで何も落とし所が見つけられなかった。
結局家に帰ってから柊に何か言う事はせず、体調が悪いと嘘をついて先に休んだ。
それからほぼ柊と顔を合わせる事なく数日が経ち、日程があと残り少なくなったバイト先に突然その女は現れた。
「すみません、こちらの商品って取り寄せできます?」
そう言ってわざとらしく何も映っていないスマホを見せながら声をかけてきた沙里奈に、憂はジロリと冷たい視線を向けた。
「…申し訳ありません。こちらの店舗が今週で終了となりますので、ご自身で注文していただいた方が確実かと」
「あら残念」
心にもない事をと思いつつ、憂はそれを無視して作業を続けた。
「考えてくれた?」
屈んで陳列を整理する憂の耳元に顔を寄せ、沙里奈は楽しそうに言った。



