灰を被らないシンデレラ




それから1ヶ月、憂はなんとか何事もなく過ごせていた。

元々警戒心は強い方であったし、市塚の言った通り本当に出禁を食らったのかあれ以来あの男を店内で見かけた事はない。

休憩も出来るだけモール内を出歩くような事はせずに控え室で済ませていた。

帰宅時はタクシーを利用したり時間が合えば柊の車に乗せてもらう。


そうしているうちにあっという間にバイトの終了期間まで半分を切った。


今日は土曜日で本来ならばバイトの日だが、月に一度のサークルの子ども食堂開催のイベントの為バイトは休みにしてもらいサークル活動に勤しんでいた。

毎回きっちりと活動に参加する憂はサークル仲間からも運営スタッフからも徐々に信頼を得られるようになっており、特に調理担当で一緒になる事の多い相原とはハッキリと友人と呼べるほど仲良くなっていた。


「香里、新しいバイトはどう?」


イベントの為の下準備をしながら憂は共に作業をする彼女にそう尋ねた。

香里というのは相原の下の名前で、仲良くなるにつれいつしかお互いに名前で呼び合うようになっていた。