灰を被らないシンデレラ





その後30分ほどして打ち合わせの終わった柊から車に来るようメッセージが来たので、コーヒー店でドリンク片手にのんびりと座っていた腰を上げて駐車場へと足を運んだ。


車に背を預けながら待っていた柊に差し入れだと新しく買ったコーヒーを手渡して助手席に乗り込めば、先程の王子様の欠片も感じられない口調で話しかけられた。


「憂、分かってると思うが色目使いやがったら即辞めさせるからな」


シフトレバーを操作しながらそんなことを言う柊に、憂は怪訝な顔を向ける。


「いやしないけど。何?色目使うって」
「お前がいつもやってる顔だろ」
「どんな顔だよ。四六時中鏡見てるわけじゃ無いんだから分からないよ」
「3秒以上見つめるな、必要以上に笑いかけるな」
「わあ…」


また無茶を言う。
若干引いている憂の心でも読んだのか、柊は前を向いたまま続ける。


「なんかあったらすぐ市塚に報告させるからな」
「ああ店長…企画課長だっけ。彼仕事できるでしょ」
「まあ信頼はしてる」
「お気に入りなんだ」
「長い付き合いだしな」


柊曰く、市塚の能力を買ってもっと上の役職を与えるつもりだったが、一方で彼は子煩悩でまだ幼い子供が3人いるため今はプライベートを大事にしたいと言われ、昇進の話を先送りにしているとの事だった。

柊という男は憂さえ絡まなければ理性的で人の事情をきちんと思いやれる男らしい。