灰を被らないシンデレラ




女性達が夫に惚れ惚れするのを心の中で概ね同意しつつ、何事も無いように振る舞いながらレジ研修を進めていく。

ひと通りの説明を受け実際に色々と操作をさせてもらったところで今日の研修は以上だと早々の終了と相なった。


「それでは週末、開店前日の日に商品の陳列を行いますので皆さんよろしくお願いします」


市塚の言葉で各々が帰宅したり残って彼に質問をしていたりする中、憂も帰ろうと隅に避けていた荷物を手に持つ。
そこでポケットに入れてマナーモードにしていたスマホが振動し通知を知らせてきた。

画面を見ればメッセージが2件。
両方とも柊からで、1つは自宅まで送るからモール内で適当に時間を潰していろという内容。

もう1つは[後ろ]とただ一言だけだった。


「?後ろ?」


言葉通り後ろを振り向けば、遠くで柊がこちらを向いて立っていて、べっと舌を出しながら挑発するような悪い顔をしていた。

子どもか、と内心毒を吐きつつ柊に目を向けたままスマホを操作する。


[了解です、旦那さま]


そう返して自身のスマホに目を向けた柊に背を向け、憂はさっさと会場を後にした。