灰を被らないシンデレラ





「ねえ柊さん、相談なんだけど」


忙しい柊とゆっくり話せる機会は少ない。

夜に顔を合わせると大抵そういうことに持ち込まれてしまうので、真面目な話ができるのは朝の少しの時間だけだ。


「私、バイトかサークルに入ろうと思うんだ」
「は?」


箸が止まり、柊の形の良いアーモンドアイが憂を睨みつける。


「新婚早々浮気かテメェ」
「なんでそうなるんだよ。じゃなくて、単に社会経験だよ」


これまでは黎の子守り兼家庭教師をしていて忙しくそんな余裕は無かったが、今はそれがなくなり時間を持て余すようになってしまった。

幸い授業も難なくこなせており単位も問題ない。


「卒業していざ就職ってなった時に何もしてないとやっぱり弱いんだよ」
「俺の所に永久就職してるだろうが」
「家で大人しく夫の帰りを待つだけって性に合わないんだよね」


柊に恋する乙女なら飛んで喜びそうな台詞をバッサリと切り捨て、憂はけろりと言い放った。

ダメかな?と言わんばかりに首を傾げればむっつりと押し黙った柊は唸るように了承の言葉を口にした。