灰を被らないシンデレラ



旧姓を名乗っているのは社長の妻だと忖度されない為。

憂は社長の妻としてではなく、自分の力で実力をつけて彼の隣に並びたいという過去の誓いの為、絶対にそこだけは譲らなかった。

けれど柊の独占欲は相変わらずで、何かしら憂に近付く者がいればすぐに柊に筒抜けになっている。

柊以外の男など微塵も興味の無い憂には何か伝わって困る事は1つも無いし、彼の束縛も慣れたものなので今更何かを思うことも無いのでスルーを決め込んでいた。

が、25歳になり女として1番輝く年頃に成長した上、夫にこれでもかと愛される憂の美貌は止まるところを知らず、左手の結婚指輪が目に入っていない男から何かしらのモーションをかけられることは時折あり、それが伝わると途端に憂の立場は弱くなる。

こうなると柊の小言は長くなるので、憂は仕方なく強制終了を試みた。


「ごめんね?でも私が愛してるのは柊さんだけだよ」


首を傾げて目元を潤ませて見つめれば、柊は弱い。
案の定グッと胸を押さえながら息を飲み込んでいる。


「お前…その顔すりゃ何でも許されると思ってんだろ」
「でも嘘はついてないよ」


柊だけを愛してる。
それは紛れもない事実だ。

そう言えば柊は深く息を吐く。


「今日会社行くのやめるか…」
「馬鹿言わないの。ほら早く食べて」


そんな軽い会話を交わしながら朝のひと時を終えた。