灰を被らないシンデレラ





「婚約指輪、絶対につけて行けよ」
「あの石の大きいやつ?大き過ぎて何するにも気を使うんだけどなあ」
「虫除けだ。男に声かけられてでもみろ、明日の朝立てなくしてやるからな」
「うへえ…」
「つかお前聞いたぞ、また出先でアプローチかけられたらしいじゃねえか」
「何で毎度毎度そう耳が早いの」
「お前の部署にスパイ潜らせてるから」
「プライバシーって知ってる?」
「そもそもお前が外で働くって聞かねえからこうする他なかったんだろうが」


あといい加減旧姓で名乗るの辞めろや、と柊は不貞腐れて言う。

大学を卒業するにあたり、憂は就職活動を試みたのだが柊からの猛反対を受けた。
後にも先にもあれほど憂の希望を断固反対されたのはあの時だけだ。


けれど専業主婦だけは絶対に嫌だったのでお互いの折衷案として入社したのが柊の会社であるgalleryの持つプライベートブランドの企画部。

かつてお世話になった市塚が昇進し、部長を務める下で働かせてもらっている。