灰を被らないシンデレラ



にこりと笑って見せれば柊は再び憂を抱き締めながら肩を揺らして笑っていた。


「やっぱただモンじゃねえわお前」


柊の笑う理由はよく分からないけれど、無事で本当に良かった。

何故ああも凶器を持った人間を簡単に組み伏せられたのかとか、刃物の扱いが何故上手いのかはこの際聞かないことにした。
知らない方が幸せなこともある。


一部始終が柊の車のドラレコに全て残っていた事もあり、それを持って柊と共にその後警察へ赴いた。


これまでの付き纏いや名誉毀損に加え、引っ越しをしたのにも関わらず新しい住所を突き止めた事、柊の回収したナイフの指紋などから沙里奈の犯行は決定的なものとされた。

彼女の親から示談の申し込みがあり、こちらも柊による過剰防衛の非もあったので被害届は出さず、このことは公にすることなく幕を閉じた。

当の沙里奈は会社を何日も無断欠勤していたらしくそれを咎められ、今は降格の末に遠くの地に移動になった為ひとまずは安心だろう。
なにより余程柊の脅しが効いたのか、事情聴取の際も名前を出すのも怖がる程に怯えていたそうだから、姿を見せる事はきっと無い。


元はと言えば柊の女癖の悪さが原因なので反省して欲しいところだが、それを言っても「その分今後お前1人に執着すればいいだけの話だろ」なんて悪びれもせずのたまうので、それを期待するのは諦めた。
つくづくよく分からない考えをする男だ。